ブラシレスモーターにおける制御技術
ブラシレスモータードライバのハードウェア設計と並んで重要なのが、マイコン内に実装される「制御ソフトウェア」です。ハードウェアが頑強であっても、ソフトウェアの制御方式が用途に合っていなければ、モーターは想定通りのパフォーマンスを発揮しません。本記事では、ブラシレスモーターを意のままに操るための代表的な制御技術と、実機に合わせたチューニングの重要性について解説します。
主要な駆動方式とその特徴
システムが求める滑らかさ、応答性、コスト制約に応じて、最適な駆動方式を選択する必要があります。

120度通電制御(矩形波駆動)
最も基礎的で広く普及している方式です。ホールセンサー等でローター位置を検出し、6つのスイッチングパターンのうち2相に順次電流を流します。制御アルゴリズムがシンプルでマイコンの負荷が低く、安価に実装できる一方、相の切り替え時にトルクリップル(回転のムラ)が発生しやすく、振動や音響ノイズの要因になりやすいというデメリットがあります。
正弦波駆動
3相すべてに滑らかな正弦波状の電流を流す方式です。トルクリップルが大幅に低減され、静音性・低振動性に優れるため、家電や空調ファンなどで多用されます。
ベクトル制御(FOC:Field Oriented Control)
近年の高性能モーター制御における主流の技術です。数学的な座標変換を用いてモーターの電流を直交する2成分に分離・独立制御することで、極めて高い効率と応答性を実現します。詳細は次節で解説します。
モーターのポテンシャルを引き出すベクトル制御(FOC)
産業用サーボモーターやEV(電気自動車)の駆動など、高効率・高応答が求められる領域で必須の技術がベクトル制御(FOC)です。
モーターに流れる三相交流電流は、そのままでは時間とともに変化するため制御が困難です。FOCでは、マイコン内部で複雑な座標変換(クラーク変換およびパーク変換)を行います。これにより、三相交流電流を「磁束を作る成分(d軸電流)」と「トルクを作る成分(q軸電流)」という、モーターの回転に同期した2つの直流成分に分離します。この変換により、ブラシレスモーターをあたかもDCモーターのようにシンプルかつ独立してPI制御できるようになります。無駄な電流を流さず、常に最大トルクが発生するよう位相を制御するため、極めて電力効率が高くなります。 また、高速回転域においては、あえてd軸電流をマイナス方向に流してモーターの逆起電力を打ち消す「弱め界磁制御」を組み合わせることで、電源電圧の限界を超えた超高速回転を実現することも可能です。
センサード制御とセンサーレス制御の使い分け
ローターの回転位置をどのように把握するかも、システム全体の設計に大きく関わります
センサード制御
ホールセンサーやエンコーダを取り付けて物理的に位置を検出します。起動直後から正確な位置がわかるため、ゼロ速度からの高トルク発進や、精密な位置決め(サーボ制御)が求められるFA機器に向いています。
センサーレス制御
モーターの非通電相に発生する逆起電力(BEMF)の監視や、オブザーバ(状態推定器)を用いた複雑な演算により、センサーなしで位置を推定します。センサー部品や配線の大幅な削減によるコストダウンと断線リスクの回避が可能なうえ、高温・高振動といった過酷な環境(コンプレッサーやポンプなど)でも高い信頼性を発揮します。
モーターとの協調とパラメータチューニング

どれほど高度なFOCソフトウェアを組み込んでも、プログラム内の設定値が実際のハードウェアと乖離していればモーターは正常に回りません。
まず、モーターメーカーごとに異なる巻線抵抗(RR R)、インダクタンス(Ld,LqL_d, L_q Ld,Lq)、極対数、逆起電力定数などのモーターパラメータを正確に測定し、ソフトウェアに反映させることが第一歩です。 さらに難しいのが、実際の装置に組み込まれた状態でのチューニングです。速度制御ループや位置制御ループのPIDゲインは、モーター軸に取り付けられた負荷の重さ(イナーシャ)や摩擦によって最適値が変化します。ステップ応答テストを行いながら、オーバーシュート(行き過ぎ)や発振を起こさず、かつ最短で目標値に到達するよう、実機環境で波形をモニタリングしながらパラメータを追い込んでいくプロセスが不可欠です。
モーター制御の最適化ソリューション
高度なモーター制御の実装には、ハードウェアのノイズ対策からマイコンの演算最適化まで、幅広い知見が求められます。東阪エンジニアリングではハードウェア設計から量産組み立てまでを一貫してサポートいたします。
モーター制御
モーター制御は、産業機器や家電、ロボット、自動車など多様な分野で求められる技術です。DCモーター、ブラシレスDCモーター(BLDC)、ステッピングモーター、ACモーターなど、用途に応じたモーター駆動制御を設計します。
高精度な制御を実現するために、PWM制御やセンサレス制御を活用し、省エネルギーと高効率駆動を両立させています。また、ベクトル制御(FOC)を用いることで、より滑らかな回転動作や精密なトルク制御が可能です。さらに、モーターの特性に応じたフィードバック制御技術を組み合わせることで、安定した動作を保証します。
当社ではブラシレスモーターをはじめとしたモーター設計・開発を得意としており、これまでに多数の開発製造実績がございます。
社内にはモーター特性を測定するための試験装置も保有しており、モーターメーカー様と近い環境での製造が可能です。

